1981年のチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式に使われた教会です。

 ロンドンで一番大きな教会で、ドームの上の十字架は地上111mの位置にあります。建築様式はバロックですが、西側はギリシャ建築様式で、コリント式柱が見事な調和を見せています。

セント・ポールとは聖パウロのことで、建物の上部にある破風には聖パウロの改宗の図が描かれています。破風の上には、聖パウロが刀を持った像があります。その左には聖ペテロが鶏と立っており、右側には聖ヤコブがいます。その一段下には福音書で有名なマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの像があります。

時計塔の中には17トンのグレート・ポールという鐘があり、1日に1回だけ、午後1時に5分間鳴ります。みんなが時計を持っていなかったときに、お昼の時間を知らせたといわれています。また、王族やカンタベリ−大司教、ロンドン司教、ロンドン市長の死も伝えます。もうひとつの鐘、グレート・トムは毎時鳴ります。

教会の歴史は7世紀ローマから布教にきたメリタスが、ここに木造の教会を作ったことから始まります。その後何回か焼失、再建が繰り返されます。13世紀に大規模なゴシック様式の教会が建てれ、14世紀初めには長さ180m、尖塔の高さ150mというヨーロッパ最大の教会が完成しました。しかし、その教会は1666年9月のロンドン大火で焼失してしまいます。

現在の教会は1675年から1710年にかけて建設されました。設計士のクリストファー・レンは、50以上の教会や宮殿などを建てた有名建築家で、シンプルな内装を好み、なるべくたくさんの光を教会の中に入れるように工夫しました。窓が大きく、ステンドグラスが入ってないのも、天井が白いのも、17世紀のオリジナルのままです。

 ドームの中の天井画は17世紀にジェームス・ソーンヒルが聖パウロの生涯を描いたものです。3年間ずっと天井と向かい合って絵を描いていた作者のことを想像してみてください。柱と柱の間にあるモザイクは新約と旧約聖書の聖人が4人ずつ描かれています。聖歌隊席上のモザイクは19世紀にクリスタルを反射させて光るようにして作ったもので、主の想像した万物(森の獲物、海の魚、空の鳥)が描かれています。 この教会は記念礼拝などにも使われますが、チャーチルなど著名人の葬式も行われました。地下には100の墓、500の記念碑があります。ワーテルローの戦いでナポレオン軍を破ったウエリントン将軍、トラファルガー海戦で亡くなったネルソン提督の墓もあります。画家のコーナーには、ターナー、レイノルズ、ローレンス、ミレー、ハント、レイトン卿など19世紀に活躍した画家の墓があります。この教会を設計したクリストファー・レンの質素な墓もあり、墓碑にはラテン語で「記念碑を見たければ、周りを見よ」とあります。レンを思い出すのに墓ではなく、作品(建築物)を見てほしいという意味でしょう。

毎日平日は17時、日曜日は15時15分から聖歌隊による詠唱があります。一般の方も参加できますので、興味がありましたらいらしてください。