今から2000年前、ローマ時代のローマでこの壷は作られました。結婚祝の贈り物として作られたものと思われます。ガラス製で、紺のガラスの塊の上に白いガラスを被せ、いっしょに吹いた後、カメオ技法で彫っています。青色ガラスが3ミリ、白色ガラスが3ミリしかないので、白色ガラスを彫る時に注意しないと穴が空いてしまう危険がありました。
18世紀に外交官だったハミルトン卿によって英国に持ちこまれました。壷はその後ポートランド伯爵の手に渡り、ポートランド伯夫人から大英博物館がこの壷を借り受けたため、ポートランドの壷という名がついています。1780年代にウエッジウッド卿が借りて、この壷のデザインを真似した陶器を作っています。現在のウエッジウッド登録商標がこの壷です。1845年に酔っ払った訪館者によって壊され、200個以上の破片に砕かれてしまいましたが、上手に修復されました。
壷の絵には32通りの解釈があると言われています。ぺリアスという人間がテェティスという若い女神に結婚を申し込みにいく図だという説が有力です。ぺリアスのことをテェティスの母ドリスが励ましています。エロスが「しっかりやれ」とはやしています。右側にいるのはテェティスの父親です。中央にいるのがテェティスで、結婚を申し込まれるのを知らないので、眠たそうにしています。手に持っている松明を落としそうです。右側は愛の神アフロディテ、左側は結婚の神ヘルメスです。私はぺリアスとテェティスがゼウスの前で結婚を誓い、裏の人は待ちぼうけをくっているという説の方が、何かピッタリくるような気がしますが・・・。とにかく人間と女神との結婚は成功し、二人の間にはアキレスが生まれます。